在胎週数に比して小さく生まれたSGA児のうち、身長がキャッチアップせず、低身長となるSGA性低身長。本記事ではSGA性低身長について、ご紹介します。
SGA性低身長とは
small for gestational ageは子宮内発育不全のため、在胎週数に比して小さく生まれた状態のことです。SGAの定義は「出生時の体重および身長がともに在胎週数相当の10パーセンタイル未満であること」ですが、出生時に身長を測定できなかった場合は体重のみで判断します。
SGAで生まれた児のうち90%は2歳までに身長SDスコア−2SD以上にキャッチアップしますが、約10%はキャッチアップしません。これらのキャッチアップしない児のうち、出生時の体重、または身長のいずれかが在胎週数相当の−2SD未満であるものがSGA性低身長として定義されます。
遺伝的素因は?
SGAの原因は遺伝疾患や染色体異常など、胎児側の要因もありますが、母体の喫煙や胎盤の形態異常や多胎妊娠等、様々です。また必ずしも要因を特定できるわけではありません。
胎児の遺伝的な要因としては、染色体異常、IGH-Ⅰ遺伝子異常、Silver-Russel症候群での7番染色体の母親性ダイソミーなどがあります。
成長ホルモン(GH)の分泌は正常
SGA性低身長でGH分泌は正常です。負荷試験でこれを確認しますよね。
SGA性低身長ではGHの不応の状態があるため、低身長が生じると考えられています。
キャッチアップできなかったSGA児のIGF-Ⅰは低値(IGH-ⅠはGH分泌を低下させる)、GHパルスの増加と振幅の低下、基礎値の上昇が見られます。
SGA性低身長の治療適応
- 暦年齢が3歳以上
- 成長率SDスコアが0SD 未満
- 身長SDスコアが-2.5SD 未満
上記をすべて満たすものがSGA性低身長に対するGH補充療法の適応となります。
メタボリックシンドロームの発症リスク
SGA児はBMIの増加を伴うキャッチアップは成人期のメタボリックシンドロームの発症リスクとなります。
これは「将来の健康や特定の病気へのかかりやすさは、胎児期や生後早期の環境の影響を強く受けて決定される」というDOHaD仮説により病態が説明されます。
練習問題
SGA性低身長について正しいものを1つ選べ。
a. SGA児の10%に発症する。
b. 遺伝的素因が必ず存在する。
c. IGF-Ⅰ値が高値である。
d. GH補充療法は1歳から適応がある。
e. 成人でメタボリックシンドロームを発症しない。
答え:a
参考文献
- 位田忍. SGA性低身長. 小児内科. 2015, 47, suppl, 318-321.
- 横谷進. 専門医による新小児内分泌疾患の治療. 第2版, 2007, 360p.
- 日本小児内分泌学会. “SGA 性低身長症におけるGH治療の手引き”. UMIN. http://jspe.umin.jp/medical/files/SGA_guide.pdf. (2023-06-30)
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