小児科専門医試験のポイントをまとめたノートとなります。
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呼吸器
心因性咳嗽
不安で増強する。
過換気症候群
浅く、早い呼吸を繰り返す。
空気飢餓感を訴える。
クループ症候群
吸気生喘鳴を認める。
循環器
消化器
代謝栄養性疾患
感染症
予防接種
年齢によって投与量の異なるワクチン
日本脳炎:生後6ヶ月〜3歳未満 0.25mL、3歳以降0.5mL
インフルエンザ:生後6ヶ月〜3歳未満0.25mL、3歳以降0.5mL
HBV:10歳未満0.25mL、10歳以降0.5mL
ロタウイルスワクチンが接種できない症例
〈ロタウイルスワクチンを受けられない人〉
・過去にロタウイルスワクチンで過敏症やそれを疑う症状があった場合
・先天性消化管障害(完治したら可能な場合あり)
・腸重積の既往
・重症複合型免疫不全症
〈その他〉
・重症複合型免疫不全症以外の免疫不全患者は個々の対応が可能。
・生物学的製剤を投与されている母体から出生した児は生後0〜6ヶ月の間、生ワクチン接種が原則不可。原則、ロタは接種期間的に接種回避。母体の主治医と相談の上、個別に対応。
エタノールが無効な病原微生物
エタノールが有効なウイルスはエンベロープを有するウイルス。インフルエンザ、コロナウイルスはエンベロープを有するウイルス。
ロタウイルス、ノロウイルス、アデノウイルス、エンテロウイルスはノンエンベロープウイルスであり、エタノールに抵抗性を示す。
新生児
新生児の多血
静脈血Ht65%以上が多血。
新生児黄疸
母乳性黄疸は母乳中のプレグナンジオールによるグルクロン酸抱合の抑制、長鎖不飽和脂肪酸の分解産物がビリルビン代謝に影響する。生後2ヶ月ごろに消失する。
生理的黄疸は生後2-3日ごろに肉眼的黄疸が出現する
24時間以内に発症する早発黄疸として血液型不適合溶血性黄疸が多い。その他の早発黄疸には頭血腫、副腎出血、G6-PD欠損などがある。
遷延性黄疸の原因は母乳性黄疸が多いが、なかには感染症、代謝性疾患、胆道閉鎖症、新生児肝炎などもある。
参考文献:
小児科診療 86 (suppl-1):912-914,2023 /
核黄疸
Praaghの核黄疸の症状
Ⅰ期(発症期) 筋トーヌスの低下、嗜眠傾向、保入力低下など非特異的症状
Ⅱ期(第Ⅰ期から1〜2週間) 核黄疸に特有な後弓反張、四肢硬直、落陽現象を認める。死亡はこの時期に多い。
Ⅲ期(第Ⅱ期から1〜2ヶ月) 第Ⅱ期に認めた四肢硬直は次第に減弱または消失し、外見状は無症状に見える時期。
Ⅳ期(生後2ヶ月以降) 永続的後遺症として、錐体外路症状、乳歯形成以上、軟調などが次第に明らかとなる。
胎児性アルコール症候群
妊娠中に過度のアルコール摂取した母体から出生した児に認められる。
特徴的顔貌、身体発育障害、中枢神経機能異常、精神行動を呈する症候群。(全てを来すとは限らない。)
身長や体重が10パーセンタイル以下の発育不全を伴うことが診断基準に入っている。
ADHDは一般人口の有病率と比較して8~10倍にのぼる。
抗SS-A抗体陽性母体から出生した児
合併することが多いのは心筋炎、房室ブロック。
参考文献:
抗 SS-A 抗体陽性女性の妊娠に関する診療の手引き
新生児低血糖
リスクファクターは母体糖尿病(高インスリン血症)、胎盤機能不全(FGRにつながる)、早産児(肝グリコーゲン不足)、新生児仮死(グルコース消費増大)など。
HCV抗体陽性、リアルタイムPCRでRNA陰性の母体から出生した児
出生後の個室隔離は不要。
HCV抗体陽性、HCV RNA陰性の妊婦から感染が成立した報告はない。HCV RNA陽性母体から出生した児の感染率は10%
母乳栄養でも母子感染率は上昇しない。
選択的帝王切開により母子感染率は低下しない。
HCV-RNA検査を生後3-12ヶ月の間に3ヶ月あけて2回行う。母子感染が成立したと判断されても20-30%は自然消失する。
新生児の呼吸の特徴
腹式呼吸が主体。
HbFが多く、酸素解離曲線は左にシフトしている。
低酸素閾値が低いため、血中二酸化炭素が高二酸化炭素閾値に達することで呼吸が再開される。しかし、その時にはすでに低酸素によって呼吸抑制を受けている可能性があり、呼吸を再開できないことがある。(これを原発性無呼吸と呼ぶ)
正期産児の体表面積は成人の1/9だが、肺胞面積は成人の1/20。体重あたりの肺胞面積が成人と比較して小さく、酸素化に不利。
新生児の気道は細く、柔らかいため、気道抵抗は高い。そのため、呼吸仕事量が大きい。
呼吸仕事量とは「換気に必要なエネルギー」のこと。以下の式で表される。(高校物理で習う仕事量の呼吸版というイメージでok。)
呼吸仕事=圧×換気量
どれぐらいの圧が必要かは肺に空気を入れる時、どれぐらいの抵抗があるかで決まり、その抵抗は弾性抵抗(肺の柔らかさ、胸郭の柔らかさ)と、気道抵抗(気道における空気の通りやすさ)によって決まるので、以下のように式を変換することもできる。
呼吸仕事 =弾性抵抗に対する仕事量+気道抵抗に対する仕事量
新生児無呼吸
新生児無呼吸の定義は20秒以上の呼吸停止、または徐脈やチアノーゼを合併する20秒未満の呼吸停止。
無呼吸には中枢性、閉塞性、混合性があるが、混合性がほとんどである。
無呼吸の原因として感染症(肺炎、髄膜炎、敗血症)が挙げられる。
カフェイン投与は無呼吸に対する標準的治療。
ドキサプラム投与時の注意は以下の通り。
①壊死性腸炎又はその疑いのある児への投与は禁忌。
②投与中は全身状態を十分に観察すべき。初期の腹部症状として胃残渣の増加、軽度腹部膨満、嘔吐、便潜血陽性がある。
③以上を認めた場合は直ちに投与をやめて適切な処置を行う。
新生児マススクリーニング
公費で実施されている母子保健事業である。
新生児マススクリーニングのうち、タンデムマス法で検査されるのは先天性代謝異常症17疾患。
ガラクトース血症(ボイトラー法、酵素法)、先天性甲状腺機能低下症(TSH)、副腎皮質過形成(ELISA法)の3疾患はタンデムマス法ではない。
日齢4〜6で採血を行う
先天性甲状腺機能低下症が最多。
新生児聴覚スクリーニング
referとなった場合は先天性難聴のリスクファクターを確認する。
難聴のリスクファクター
極低出生体重児(1500g未満)
重症仮死(Ap1分値4点以下)
交換輸血を考慮する新生児高Bil血症
子宮内感染(風疹、トキソプラズマ、梅毒、CMV)
顔面頭頸部奇形
細菌性髄膜炎
先天性難聴の家族歴(両親、同胞、祖父母)
聴神経毒性薬剤使用(アミノグリコシド、ループ利尿薬を3日以上使用)
人工換気療法(5日以上)
参考文献:
JOHNS 38 (7):719-722,2022 / 7
先天性サイトメガロウイルス感染症診療ガイドライン2023
産婦人科診療ガイドライン2020産科編
染色体異常、先天異常
染色体検査
- Gバンド
- FISH(Fluorescence in situ hybridization)
- マイクロアレイ(比較ゲノムハイブリダイゼーション法、SNP法)
Gバンド
わかること:①染色体の数(トリソミー21、ターナー症候群など)、②染色体の構造(転座、欠失、逆位、重複、挿入)
FISH
わかること:①数的異常(トリソミー21、ターナー症候群など)、②微細欠失(22q11.2欠失、Prader-Willi、Angelmanなど)、③由来不明な染色体の確認
マイクロアレイ
次世代シークエンサーとともにこれから臨床応用が進んでいく検査。上記2種類より細かく検査できる。
内分泌
SGA性低身長
SGAの約10%に発症する。
治療は3歳以降に行う。
発症要因は染色体異常、遺伝性疾患等、胎児側の影響、感染症、喫煙等、母体側の影響など。
SGA低身長ではGH分泌は正常、IGF-1(ソマトメジンC)は低下している。
成人でメタボリックシンドロームになる可能性がある。(DOHaD)
バゾプレシン分泌過剰症(SIADH)
診断基準の検査所見
血清Na濃度<135mEq/L
血漿浸透圧<280mOmsm/kg
低Na血症、低浸透圧血症にも関わらず血漿バゾプレシン濃度が抑制されていない。
尿浸透圧>100mOsm/kg
尿中Na>20mEq/L
腎機能正常。
副腎皮質機能正常。
腎・泌尿器
肉眼的血尿
【肉眼的血尿をきたす疾患】
感染後急性糸球体腎炎、溶血性尿毒症症候群、ナットクラッカー現象、尿路結石、出血性膀胱炎、外傷、腎梗塞、腎動脈/静脈血栓、血管走行異常、悪性腫瘍、出血傾向、月経血混入
低形成腎・異形成腎
尿検査で異常が見られることは少なく、軽度蛋白尿にとどまることが多い。
低形成腎において、ネフロンの数は減少している。
異形成腎の特殊型で多嚢胞性異形成腎があり、この場合は腎臓に多発する嚢胞を認める場合がある。多発性嚢胞腎と多嚢胞性異形成腎は別(多発性嚢胞腎は遺伝性、多嚢胞性異形成腎は非遺伝性(一部遺伝性))である。
低形成腎と異形成腎の区別は組織学的になされるもので、画像診断ではできないが、臨床的にその鑑別が必要になることは少ない。異形成腎の診断は組織学的により下される。その特徴としては、primitive ductと異所性軟骨の2つが挙げられる。
低形成・異形成腎の特徴的な症状として希釈尿が挙げられる。水、Naを再吸収できず、脱水、低Na血症がおこり、成長障害がおこる。
免疫
免疫の発達
胸腺の機能は幼児期まで活発に働き、思春期で最も大きくなり、その後は年齢とともに萎縮していき、脂肪組織と置き換わることで周囲の脂肪組織と見分けがつきにくくなる。
出生児は好中球優位、生後2週で好中球とリンパ球が1:1となり、乳幼児期にリンパ球優位(最大60%)となる。その後、再度リンパ球の比率が減少し、4〜5歳で再度1:1となる。6歳以降はリンパ球は30%程度まで減少する。単球は数%で年齢、月齢による変化はない。ウイルス感染を繰り返す乳幼児期にリンパ球が増えるのは理にかなっている。
1歳時点でキラーTは成人と同様まで発達しているが、免疫グロブリンは星人の60%程度であることを踏まえると、乳幼児期はT細胞>B細胞であると考えられる。
IgAは生後12ヶ月で成人の約20%程度。
IgGは出生後減少し, 生後3,4カ月で最低となり, その後上昇する。
IgA欠損症
グロブリン製剤にIgAが少量含まれ、IgA欠損症患者でまれにみられる抗IgA抗体と反応し、アナフィラキシーをきたしうる。
アレルギー
気管支喘息
重症になるにつれて喘鳴は増悪するが、呼吸不全まで至ると喘鳴は減少、または消失する。
リウマチ性疾患など
若年生特発性関節炎
主病変は滑膜炎
メトトレキサートが有効
難治例にはTNF-α阻害剤等、生物学的製剤を使用する。
少関節方、抗核抗体妖精霊ではぶどう膜炎を合併しやすい。
治療反応不良のリスク因子はRF、抗CCP抗体
中毒
事故
先天代謝異常
神経疾患
筋疾患
筋疾患
筋疾患を疑ったら、CK測定、筋電図、筋生検を考慮する。(病気がみえる 神経)
針筋電図では運動単位での振幅減少を認める。(病気がみえる 神経)
骨・運動器疾患
発達障害・心身症・精神疾患
睡眠障害
発達障害やADHDなどでは睡眠障害の合併が多い。
治療開始前に睡眠衛生の確認が重要。
小児において閉塞性睡眠時無呼吸症候群は1~3%で見られる。扁桃腺肥大やアデノイドによるものが多い。
ナルコレプシーは10代での発症が多いが、5歳以下での発症も稀ではない。昼間過眠、情動脱力発作(カタプレキシー)を伴います。入眠時幻覚、かなしばり、頻回覚醒を伴う。発症にオレキシンが関係している。治療薬の第一選択はモダフィニル。
睡眠薬にはベンゾジアゼピン系、非ベンゾジアゼピン系、メラトニン受容体作動系があるが、各睡眠薬の消失半減期には大きな違いがあり、不眠症状のタイプ、患者の臨床的背景などを考慮して薬剤を選択すべき。
ベンゾジアゼピンは選択肢の1つにはなりますが、第一選択ではない。
注意欠陥・多動性障害
薬物療法は環境調整や行動療法を行なっても改善が認められない時に実施すべき選択肢。6歳以上が適応年齢。
ペアレントトレーニングは「親が自分の子供に対する最良の治療者になれるという考えに基づき、親を対象に子どもの養育技術を獲得させるトレーニング」。ADHDの治療として重要。
環境調整には人的環境調整と物理的環境調整があり、座席の調整などは物理的環境調整。座席は外からの刺激を避けるために窓際を避け、声掛けしやすい、担任の前の席にする。ただし、後方の座席が落ち着く場合もある。
メチルフェニデート徐放剤(コンサータ)、リスデキサンフェタミン(ビバンセ)は適正流通管理委員会の管理のもと、リストに登録された医師、医療機関、薬局、薬剤師のみ処方、取り扱いが可能。
血液・腫瘍性疾患
脾腫
【脾腫を起こす病態】
- increased splenic function(感染症、溶血性貧血、自己免疫疾患)
- infiltration(白血病/リンパ腫、先天代謝異常症)
- congestion(門脈圧亢進症、心不全)
他科との境界領域
視機能
視力は新生児期は0.02程度で、ここから徐々に視力が上がる。
生後1〜1.5ヶ月ぐらいで両親の顔を見つめることができ、生後2ヶ月で両親の動きを目で追うことができるようになる。その後、視力は生後3ヶ月で0.1、生後6ヶ月で0.2、1歳で0.4、3歳で0.8〜1、そして、6歳で視機能はほぼ完成すると言われている。
両眼視機能は出生時にはないが、生後2〜6ヶ月ぐらいでできるようになる。
両眼視機能とは?
左右の網膜に映った像を1つに合わせる能力。これで遠近感や、立体感がわかるようになる。
色覚は3〜5ヶ月から獲得する。
成長・発達
乳歯
乳歯は生えそろうと20本
6〜8歳から生え変わりがおこる。
身長、体重
出生時50cm→1歳75cm。1.5倍、25cm伸びる。
幼児期は7cm/年伸びて、4歳で出生時の2倍の身長(100cm)になる。
思春期では身長が8〜10cm/年伸びる。
その他
疫学
乳児期の死因
1位 先天奇形、変形および染色体異常 35.1%
2位 周産期に特異的な呼吸障害等 14.1%
3位 乳幼児突然死症候群 5.7%
乳児(0~1歳)における不慮の事故の原因として最も多いのは窒息。
小児の鎮静
食事、水分摂取は2−4−6ルールに準ずる。
鎮静中の低換気はカプノメーターで管理する。
どの鎮静薬でも危険。浅い鎮静のみ達成しうる鎮静薬はない。
人を対象とする生命科学・医学系研究に関する 倫理指針 ガイダンス
我が国の研究機関により実施され、又は日本国内において実施される人を対象とする生命科学・医学系研究を対象とする。
インフォームドアセントは、小児に限らず、インフォームドコンセントを与える能力を欠くと客観的に判断される研究対象者が、研究を実施されることに自らの意思を表することができる場合に、その理解力に応じたわかりやすい説明を受け、当該研究を実施、または継続されることを理解し賛意を表すること。
新たに試料(血液等)を得る場合は諸手続きのインフォームドコンセントを受ける必要がある
虐待
虐待に特徴的な所見は陥没骨折、硬膜下血腫。
硬膜外血腫、縫合を超えない線状骨折は虐待以外の外傷でも生じる。
揺さぶられっ子症候群(Abusive Head Trauma in Infants and Children = AHT)でも、くも膜下出血は生じる。
しかし、AHTと非AHTで比較した研究では、くも膜下出血はオッズ比0.98→くも膜下出血は揺さぶられっ子症候群に特徴的な所見ではない。
チャイルドシート
2000年4月1日に改正道路交通法が施行され、6歳未満の子どもにチャイルドシート着用が義務化された。
2023年の使用率は1歳未満92.0% > 1〜4歳 78.7%> 5歳55.5%
着用に「問題あり」が全体の30〜40%
正しく使用すれば、チャイルドシートによる死亡率の低下は71%、子どもの死傷率の低下は54%
後部座席に使用するのが原則だが、やむを得ず助手席で使用する場合は座席を1番後ろまで下げて、前向きに使用する。エアバッグとの距離が近づきすぎるから後ろ向きはNG。
参考文献:
提言 車での安全な移動について―子どもの場合
チャイルドシートの使用率は76.0%(2023年版)
筋肉注射
月齢、年齢によって接種部位が変わる。
1歳未満→大腿前外側の中央1/3
1〜2歳→ 大腿前外側の中央1/3 または三角筋中央部
3歳→三角筋中央部
適切な長さの針を用いる。
同時接種の場合は、解剖学的に別部位に接種する。あるいは同部位でも2.5cm以上離す。
逆血確認は不要。
筋肉内注射のワクチンはHPV、髄膜炎菌、狂犬病、新型コロナウイルス。
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