常染色体優性遺伝多発性嚢胞腎(ADPKD)は腎臓に嚢胞がたくさんできる遺伝性疾患です。
目次
孤発例の頻度は?
原因遺伝子はPKD1、またはPKD2遺伝子変異によるものです。
ADPKD全体の5~15%が孤発例です。
診断される年齢
多くは出生時には診断されません。30~40歳までは無症状で経過することも多く、健診の超音波検査で診断されることが最も多い疾患です。
健診以外には、腹部膨満感、腹痛、側腹部痛、腰背部痛、肉眼的血尿などの症状が出現したり、合併症である高血圧を指摘されたことを契機にして診断されることもあります。
合併症
合併症としては高血圧、肝嚢胞、脳動脈瘤があります。
肝嚢胞は高齢者で発症する単純性腎嚢胞では生じません。ADPKDと単純性腎嚢胞との鑑別ポイントとなります。
また、ADPKDでは画像検査上、嚢胞を認めない部分にも微細な嚢胞が形成されているため、腎腫大を伴います。腎腫大の有無も単純性腎嚢胞との鑑別に重要です。
治療
バゾプレシン受容体拮抗薬(トルバプタン)が2014年に保険適用として認可されています。
ADPKDではPKD1、またはPKD2遺伝子の異常によっって尿濃縮力障害が存在します。そのため、バゾプレシンの分泌が亢進し、それが細胞内のcAMPを増加させることで嚢胞を形成します。
トルバプタンを投与することによって細胞内のcAMPを減少させることができ、嚢胞増大を抑制します。
練習問題
常染色体優性遺伝多発性嚢胞腎について正しいものを選べ。
a. 脳動脈瘤を合併することがある
b. 50%ほどが孤発例である
c. 多くは出生時に診断される
d. 治療によって進行を抑制できる
答え:a, d
参考文献
- 望月俊雄. 多発性嚢胞腎の診断と治療. 腎と透析. 2020, 89, 4, 510-512.
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