今回は高アンモニア血症をきたす先天性代謝異常症について解説します。
高アンモニア血症をきたすのは?
尿素サイクル異常症、有機酸代謝異常症、脂肪酸代謝異常症、ミトコンドリア異常症などで高アンモニア血症が生じます。
尿素サイクル異常症
アンモニアの解毒を行う尿素サイクルにおいて異常が生じている疾患です。
具体的には下記の疾患が存在します。
CPSⅠ欠損症
OTC欠損症
シトルリン血症Ⅰ型
アルギニノコハク酸尿症
アルギニン血症
NAGS欠損症
尿素サイクル異常症による高アンモニアは200μg/dL以上となることがほとんどで、1000μg/dL以上となることも珍しくありません。
有機酸代謝異常症
有機酸はアミノ酸を構成しており、アミノ酸が代謝される過程で有機酸ができます。
アミノ酸 → NH2 + 有機酸
その後、有機酸は様々な過程を経て、アセチルCoAとなり、エネルギー(ATP)を産生します。
有機酸 → 様々な過程 → アセチルCoA → ATP
有機酸代謝異常症ではこの「様々な過程」で異常が生じます。
すると、アセチルCoAになれなかった代謝産物「アシルCoA」が体内に蓄積します。
例えば、プロピオニルCoAやメチルマロニルCoAなどがアシルCoAです。
アシルCoAは人体にとって有害なので体外に排泄する必要がありますが、その時にカルニチンが消費されます。これをカルニチン抱合と呼びます。
カルニチンは尿素サイクルの入り口のアンモニア→カルバモミルリン酸の反応に関わっているため、2次的に尿素サイクルが回らなくなります。
尿素サイクルが回らないと、高アンモニア血症が生じます。
有機酸代謝異常症の高アンモニア血症は疾患、病型によって上昇の程度が異なります。
数百μg/dLの上昇となる疾患も多いですが、イソ吉草酸血症の新生児期急性発症型などでは1000μg/dLを超えることもあります。
高アンモニア血症の程度のみで尿素サイクル異常症と有機酸代謝異常症を確実に鑑別することはできない、と覚えておきましょう。
練習問題
感冒後の意識障害と高アンモニア血症で考えられるものはどれか。2つえらべ。
a. ムコ多糖症
b. 糖原病
c. 尿酸代謝異常症
d. 有機酸代謝異常症
e. 尿素サイクル異常症
答え:d, e
日齢1の新生児。正期産で日齢0から母乳を飲んでいたが、徐々に哺乳不良が出現した。生後36時間時に痙攣が出現し、NICUへ入室した。血糖132mg/dL、静脈血液ガス:pH7.474 PCO2 30.3mmHg、アンモニア1054μg/dL。
診断に必要な検査を2つ選べ。
a. 尿中ムコ多糖分析
b. 尿中オロット酸分析
c. 血中アミノ酸分析
d. 血中極長鎖脂肪酸分析
e. 白血球ライソゾーム酵素活性
答え:b, c
アンモニアの上昇していることから、尿素サイクル異常症、有機酸代謝異常症、脂肪酸代謝異常症、ミトコンドリア異常症などが疑われます。
極長鎖脂肪酸分析(副腎白質ジストロフィー)、尿中ムコ多糖分析(ムコ多糖症)、白血球ライソゾーム分析(ライソゾーム病)は検査の対象ではない。→アミノ酸分析、オロット酸分析が答え。
参考文献
- 中村公俊. 尿素サイクル異常症. 小児内科. 2016, 48, suppl, 74-79.
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